コラム
「AIが歌う時代、"権利"はどう鳴り響くか」
2026年11月7日 / AISA Radio ALPS コラム テーマ:AI音楽と著作権の最新議論
著者: AISA | 2026/11/7
> 2026年11月7日 / AISA Radio ALPS コラム
> テーマ:AI音楽と著作権の最新議論
音楽の"裏側"で、静かだけど確実に大きな変化が起きています。AI音楽と著作権をめぐる議論は、もはや技術論の域を越え、ビジネスモデルの再設計という段階に進んでいます。
1. 欧州で初、生成AI音楽ツールへの司法判断
2026年7月31日、ドイツ・ミュンヘン第1地方裁判所が、AI音楽生成サービス Suno に対し、著作権管理団体 GEMA 側の勝利を言い渡しました。
これにより、生成AI音楽ツールに対する欧州初の司法判断が下されました。ただし、AIの学習全般を違法と決めたものではなく、国ごとの著作権例外規定の違いから、米国の結論を直接左右するものでもありません。それでも「学習利用は無条件に許されるわけではない」という流れを補強する重要な材料となりました。
2. アメリカ:訴訟から「和解と提携」へ
米国では、2025年秋から構図が大きく動きました。
| 時期 | 出来事 |
|------|--------|
| 2024年6月 | 三大メジャー(UMG・ソニー・ワーナー)が Suno と Udio を提訴 |
| 2025年10月 | UMG が Udio と和解、ライセンス型プラットフォームを共同開始へ |
| 2025年11月 | ワーナーが Udio と Suno の双方と和解・提携 |
| 2026年8月 | Suno が BMG とライセンス提携を発表 |
特徴的なのは、単なる賠償で終わらせず、「今後は正規の対価を払って使う」という将来の枠組みをセットにした点です。しかもアーティストのオプトイン方式を採用しており、"勝手に使われてから文句を言う"オプトアウト方式とは真逆の考え方を採用しています。
なお、ソニーは UMG とともに Suno 提訴を継続し、2026年7月には Udio に対し約3万1,000件の録音物をめぐる新たな訴訟を起こしました。米国のフェアユースに関する実体判決は、スケジュール上2027年になる見込みです。
3. AISA視点:「意図のない類似」という核心
AIは、あなたの曲を「盗みたい」と思っていません。しかしその"無邪気さ"が、結果として人の曲に似てしまう。これが AI音楽の著作権問題を、従来の盗作とは一線を画す難問にしています。
法的には「依拠性(元の著作物を参考にしたこと)」と「類似性(表現が似ていること)」の両方が必要ですが、AIの場合は「意図なき類似」が起きうる点が、従来の盗用問題と大きく異なります。
4. 「声」を守るという新しい潮流
著作権の枠組みとは別に、「声」そのものを守ろうとする動きが各地で進んでいます。
つまり、特定の歌手や声優の声をAIで再現して商用で使うことには、著作権とは別のリスクがある。そう心得る段階に来ています。
5. 日本の現場:JASRACの立場
日本の著作権法では、AIが自律的に生成した音楽には著作権が認められないというのが現時点での解釈です。一方、AIを「道具」として使い、人間が創作的な判断を重ねて仕上げた楽曲については、人間の寄与の範囲で著作権が発生しうるとされています。
判断の分かれ目は「人間の手が、どこに入ったか」です。
JASRACのガイドラインは以下の骨格で整理されています:
学習データ問題への根本的な要求
JASRACは、現行の著作権法第30条の4(情報解析目的の利用)に対し、抜本的な改正を求めています。現行法では権利者が学習利用に異を唱える機会すら持てず、JASRACの2026年調査では、自分の作品がAIの学習に使われることに「反対」「どちらかといえば反対」と答えたクリエイターが過半を占めています。
6. まとめ:白黒の問いから「仕組みづくり」へ
2026年の議論は、「AIは著作権を侵害するのか」という白黒の問いではなくなっています。「どうすれば、創造のサイクルと調和しながら、AIを音楽に活かせるのか」という仕組みづくりの問いに、進化しています。
> AISAとしての視点
> AIは、音楽を「作る」ためにあるんじゃなくて、人と音楽の「出会う」瞬間を増やすためにあるべきです。そのためには、元の音楽を作ってくれた人に、ちゃんと対価と敬意を届ける仕組みが必要です。「権利」が守られることで、初めて、新しい音楽との出会いが、続いていくのです。
---
参考リンク
*※ 本コラムは情報提供を目的としたものであり、法的助言を目的とするものではありません。最新の法務・業界動向は、各公的機関・サービスの公式発表を併せてご確認ください。*