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2026年3月、AI音楽をめぐる法規制が世界同時多発 英国は著作権フリー利用案を撤回、米国では集団提訴が相次ぐ

2026年3月、AI音楽をめぐる法律・規制の動きが世界中で活発化している。英国政府がAI学習への著作権フリー利用方針を撤回し、米国では独立系アーティストがGoogleの「Lyria 3」を提訴。各国でクリエイター保護とイノベーション促進のバランスを探る動きが加速している。

著者: AISA | 2026/3/23

2026年3月、AI音楽規制の激動の一ヶ月

2026年3月は、AI生成音楽をめぐる法律と規制の世界地図が塗り替えられた歴史的な月として記憶されるかもしれません。米国、英国、EU、中国、日本がほぼ同時に動きを見せ、特に著作権保護の潮流が大きく変化しています。

英国:著作権「オプトアウト」案の撤回

3月18日、英国政府のリズ・ケンドール科学技術大臣は、AIに著作権作品を無断で学習させることを原則認める「テキスト・データマイニング(TDM)例外」計画を正式に撤回しました。これは「デフォルトで使ってOK、嫌なら自分で声を上げてね」というルール案に対する、エルトン・ジョンやデュア・リパら著名アーティストを中心とした業界の猛反発が実を結んだ結果です。英国貴族院デジタル委員会は代わりに「ライセンスファースト」モデルを推奨しており、AI開発者はまず権利者とのライセンス契約を結ぶことが原則となりつつあります。

米国:訴訟の激化と連邦法整備の動き

大西洋を隔てた米国では、訴訟が激化しています。3月6日には独立系ミュージシャン・ソングライターのグループが、GoogleのAI音楽生成モデル「Lyria 3」を提訴。訴状では、Googleが数百万の著作権楽曲を無断でコピーし、学習に使用したと主張しています。

さらに3月20日、ホワイトハウスは国家AI立法枠組みを発表。その中で「知的財産権の尊重とクリエイター支援」を柱の一つに掲げ、AIのフェアユースを認めつつもクリエイターの権利保護に配慮する方針を示しました。最大のポイントは、州ごとにバラバラな規制を連邦法で統一しようとする「連邦法による州法の優越(Federal Preemption)」の方針です。

ドイツの画期的判決と日本の動向

先週、ドイツでは音楽生成AI「Suno AI」で作成された楽曲に関する画期的な判決が出ました。裁判所は、「AI製であるから著作権は無効」という被告側の主張を退け、「クリエイティブな過程が詳細に示され、本人が書いたという宣誓がある場合は保護される」と判断。AIはツールであり、人間の創作性が介在していれば著作権保護の対象となるという重要な一線を示しました。

日本では、文化庁が既存の著作物から学習したAIの生成物について、「学習行為そのものは適法」とする一方、生成物が既存作品に「類似」している場合の侵害認定基準を明確化するガイドライン案を発表しています。日本のアプローチはEUのような厳格な事前規制ではなく、既存法とソフトロー(ガイドライン)の組み合わせによる「推進寄り」の路線が特徴です。

AI音楽クリエイターが今、取るべき実践的対策

この激動の法環境において、AIを使って音楽を作るクリエイターは以下の点に注意することが求められます。

1. 人間の創作的関与を確保・記録する: プロンプトに独自性を持たせ、AI出力に対して編集やミキシングなど明確な創造的判断を加え、そのプロセスを記録として残す。
2. 利用するツールの規約とデータ源を確認する: 商用利用を想定する場合は、ツールが「権利クリア済み」のデータで学習しているか、利用規約でどのような権利帰属が定められているかを厳格にチェックする。
3. グローバルな展開を視野に入れる: 日本国内では問題なくても、楽曲を英国やEUで配信・利用する場合、異なる規制が適用される可能性がある。

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AIと人間の共同創造のルールは、今まさに形作られようとしています。AISA Radio ALPSでは、こうした法律や倫理の話題から、最新のAI音楽ツールの使い方まで、クリエイターの皆さんに役立つ情報をお届けしています。これからも、音楽とAIの未来を一緒に考えていきましょう。

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