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2026年3月、世界が動いた:英国がAI学習の著作権オプトアウト撤回、EU・米国も規制強化へ

2026年3月、AI音楽を取り巻く法的環境が世界的に大きく変化した。英国政府がAI企業による著作権コンテンツの無断利用を認める方針を撤回したほか、EUや米国でも規制の動きが加速。クリエイター保護の流れが強まっている。

著者: AISA | 2026/3/25

歴史的転換点:英国の「著作権オプトアウト」撤回


2026年3月18日、英国政府のリズ・ケンドール科学技術大臣は、AI企業が著作権作品を学習に使うことを原則許可し、権利者が拒否(オプトアウト)する仕組みとする計画を事実上撤回しました。これは、エルトン・ジョン、デュア・リパ、レディオヘッドのトム・ヨークら著名アーティスト数百名が連名で反対した結果です。政府が実施したパブリックコメントでは、1万1500件以上の意見の圧倒的多数がこの案を拒否。UK Musicのトム・キールCEOは「深刻なダメージをもたらしたはずの著作権変更が廃案になったことを心から喜んでいる」と歓迎の声を上げています。

この決定は、「ライセンスファースト」モデルへの転換を示すものであり、AI開発者が著作物を利用する際には、まず権利者とのライセンス契約を結ぶことが原則となりつつあります。

グローバルな規制強化の波


英国の動きは単独の現象ではありません。2026年3月、世界の主要国・地域が相次いでAI規制を強化する動きを見せています。

  • EU: 理事会がAI法(EU AI Act)改正の交渉ポジションを確定。非同意性的コンテンツの生成を明示的に禁止するなど、規制を強化しつつ適用期限を明確化しました(2027年12月〜2028年8月)。

  • 米国: 3月20日、ホワイトハウスが国家AI立法枠組みを発表。知的財産権の尊重とクリエイター支援を柱の一つに掲げ、連邦法による州法の統一(プリエンプション)を目指しています。

  • 日本: 「AI基本計画」に基づき推進重視の路線を維持する一方、海外展開する企業は各国の規制に対応する必要性が高まっています。
  • AI音楽生成ツールをめぐる訴訟の激化


    規制議論と並行して、法廷でも戦いが激化しています。2026年3月6日には、米国の独立系ミュージシャンらがGoogleのAI音楽生成モデル「Lyria 3」を提訴。訴状では、Googleが著作権で保護された数百万の楽曲を無断で学習に使用したと主張しています。

    また、Universal Music Groupなど主要レーベルによるAI企業への訴訟も進行中で、「AIの学習は著作権侵害ではない」という主張の時代は終わりつつあり、ライセンスを通じた適正な対価の支払いを求める新しい秩序が形成されつつあります。

    クリエイターとユーザーが取るべき現実的な対策


    このような環境下で、音楽クリエイターやビジネスユーザーが取るべき現実的な対策は以下の通りです。

    1. 利用するAIツールの利用規約を精査する:「商用利用」が可能か、生成物の著作権帰属はどうなっているか、を必ず確認する。
    2. 「権利クリア済み」サービスを検討する:学習データの段階から自社で権利を保有するサービス(例:Evoke Music, SOUNDRAW)の利用は、法的リスクを大幅に低減します。
    3. 創造的関与の記録を残す:AIの出力に対して自身で編集、ミキシング、アレンジを加えた場合は、そのプロセスを記録として残し、人間の著作者性を主張できるようにする。

    世界のAI音楽規制は「パッチワーク」状態から、クリエイターの権利保護をより重視する方向へと舵を切り始めました。今後は、EU AI Actの完全施行や米国での立法動向に注目が集まります。

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    *AI音楽の可能性と課題についてもっと深く知りたい方は、AISA Radio ALPSで最新の動向をチェックしてください。音楽とテクノロジーの交差点を、一緒に探求しましょう。*

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