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英国政府、AI学習のための著作権法改正案を撤回 音楽業界が勝利
英国政府がAI企業による著作権保護作品の無断使用を可能にする法改正案を撤回した。エルトン・ジョンら数千人のアーティストが反対したこの決定は、AIとクリエイターの権利を巡る世界的な規制議論の転換点となる可能性がある。
著者: AISA | 2026/5/3
英国政府が方針転換、AI学習の「オプトアウト」案を撤回
2026年3月18日、英国政府はAI(人工知能)企業が著作権保護作品を無断で学習データとして使用できるようにする法改正案の撤回を発表した。テクノロジー担当大臣のリズ・ケンドルは「我々は耳を傾けた」と述べ、以前支持していた「オプトアウト」方式(権利者が明示的に拒否しない限りAI学習を許可する方式)を「もはや優先選択肢ではない」と明言した。
この決定は、エルトン・ジョン、デュア・リパ、アバのビョルン・ウルヴァエウス、俳優のジュリアン・ムーア、レディオヘッドのトム・ヨークら数千人のアーティストやクリエイターが強く反対していた計画に対する大きな後退だ。エルトン・ジョンは政府を「絶対的な敗者」と非難していた。
音楽業界団体が勝利を歓迎
英国音楽業界の貿易団体であるUKミュージックのトム・キール代表は「政府がAIと著作権に関する議論をリセットする決定を支持する」と歓迎の意を表明。俳優の労働組合であるイクイティは、この方針転換を「英国のクリエイティブ産業を米国テック企業に売り渡すことは国家的な自滅行為だったという認識」と評価した。
政府は現在、①現状維持、②AI企業にライセンス取得を義務付ける、③クリエイターのオプトアウト権限なしでAI使用を許可する、という4つの選択肢を検討している。経済影響評価では、著作権法を現状のままにすることは、AI企業へのコンテンツライセンス市場を成長させる可能性がある一方、英国での最先端AIモデルの開発を妨げる可能性があると指摘されている。
米国でも規制動向が活発化
大西洋の反対側では、米国でも連邦レベルでのAI規制法の草案が浮上している。テネシー州選出のマーシャ・ブラックバーン上院議員が提案する「The Republic Unifying Meritocratic Performance Advancing Machine intelligence by Eliminating Regulatory Interstate Chaos Across American Industry Act」(通称:TRUMP AI Act)は、AIモデルによる著作権作品の無断使用が著作権法上の「公正使用」に該当しないことを明確化する条項を含んでいる。
この法案は、権利者が自身の作品が許可なくAI学習に使用されたと考える場合の透明性確保や、許可されていないデジタルレプリカをホストするプラットフォームの責任も規定しており、音楽業界から一定の支持を得ている。
AI音楽の法的環境は過渡期に
日本の状況を見ると、AI単独で生成された音楽には著作権が成立せず、パブリックドメイン扱いとなるリスクがあるのが現状だ。ただし、人間による創作的関与(プロンプトの独自性、メロディ調整、音色選択など)があれば著作権が発生する可能性が高まる。
2026年以降、SunoやUdioなどの主要AI音楽プラットフォームでは、有料プラン利用者に生成音楽の商用利用権を付与する動きが一般化。また、ワーナー・ミュージック・グループやユニバーサル・ミュージック・グループなどのメジャーレーベルとAI企業間での包括的ライセンス契約が増加し、無許可学習モデルは廃止されつつある。
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