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伝説的アーティストがAIと共創、著作権を保持する新モデル「The Eleven Album」がリリース

2026年1月、ElevenLabsがライザ・ミネリ、アート・ガーファンクルら世界的アーティストとAIで制作したアルバムを発表。アーティストが全著作権と収益を保持する、AIを「創造性の拡張ツール」とする新たな共創モデルが注目を集めている。

著者: AISA | 2026/5/3

アーティスト主導のAI共創、新たなパラダイムを提示


2026年1月21日、AI音声・音楽生成企業のElevenLabsは、画期的な音楽プロジェクト「The Eleven Album」をリリースしました。このアルバムは、EGOT(エミー、グラミー、オスカー、トニー賞)受賞者のライザ・ミネリ、8回のグラミー賞受賞者アート・ガーファンクルをはじめ、総計10億回以上のストリーミング再生数を誇る伝説的アーティストたちが、同社のAI音楽生成モデル「Eleven Music」と共創した作品集です。

従来モデルとの決定的な違い:著作権と収益の確保


このプロジェクトが画期的なのは、そのビジネスと権利保護モデルにあります。参加アーティストは、制作した楽曲の完全な著作権と商業的権利を保持し、全てのストリーミング収益を受け取ります。これは、著作権者の許諾なしにAIモデルを訓練したとして大手レーベルから訴訟を受けているSunoやUdioといった競合他社とは一線を画す、「オプトイン方式」を採用したアプローチです。

ElevenLabsは2025年8月、世界最大のインディーズ音楽出版社Kobalt Musicおよび独立系レーベルを代表するMerlinとパートナーシップを締結。この契約により、アーティストやソングライターは自らの意思でAIモデルのトレーニングに参加し、対価としてロイヤリティを受け取る仕組みが構築されています。

技術と創造性の融合


技術面では、Eleven Musicは44.1kHzのスタジオ品質オーディオを生成し、複雑なプロンプトに対しても歌詞、キー、BPMを正確に追従します。これにより、アーティストは作曲のアイデア出し、新ジャンルへの実験、制作プロセスの加速など、多様な用途でAIを「創造性の拡張ツール」として活用できます。

アルバムはラップ、ポップ、R&B、EDM、映画音楽など多様なジャンルにまたがり、グラミー賞受賞プロデューサーや次世代クリエイターも参加。単なる技術デモではなく、アーティストの音楽的直感とAIの能力が融合した、本格的な音楽作品として仕上がっています。

業界に与える影響と未来像


2026年現在、純粋にAIが生成した音楽は米国著作権局の見解では著作権保護の対象外とされています。しかし、人間の実質的な創造性が加わった作品は保護される可能性があります。「The Eleven Album」は、この法的グレーゾーンを、アーティストの権利を最優先にすることで慎重に対処した先駆的な事例と言えるでしょう。

この動きは、YouTubeが2023年に開始した「Dream Track」実験(Charlie Puth、John Legend、Demi Lovatoらの声をAIで再現しショート動画用楽曲を生成)など、プラットフォーム主導の動きと並行して進んでいます。しかし、ElevenLabsのモデルは、テクノロジーが表現を代替するのではなく、アーティストの創造的可能性を拡張するツールとして機能する未来の姿を、より明確に提示している点で意義深いものです。

AI音楽の世界は、生成ツールの性能競争から、いかにして持続可能で倫理的な創造のエコシステムを構築するかという新たな段階に入っています。AISA Radio ALPSでも、これからもAIとクリエイターの新しい関係性に注目し、深掘りしていきます。

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