2026年7月8日現在、AI音楽業界は歴史的な転換期を迎えている。2023〜2024年にかけて続いた大手レコード会社とAI企業の訴訟合戦は収束し、2025年末にはUMG(ユニバーサル・ミュージック・グループ)とUdio、WMG(ワーナー・ミュージック・グループ)とSunoなどが和解・ライセンス提携を結んだ。これにより、業界は「AIを排除する」から「AIと共存・収益化する」段階へと舵を切った。
JASRACが明確にした「人間の創作的寄与」の基準
日本でも動きは明確だ。JASRAC(日本音楽著作権協会)は2026年6月11日、生成AIと著作権に関する最新ガイドラインを公表した。その核心は「人間の創作的寄与」の有無である。
* 完全AI生成曲:人間が歌詞・楽曲ともに創作に関与していない場合、著作物と認められずJASRACの管理対象外。使用料分配も発生しない。 * ハイブリッド曲:作詞は人間、作曲はAI、といった場合、人間が創作した部分のみが管理対象となる。
これは米国著作権局(USCO)の方針とも整合しており、「AIは道具であり、人間が主体であること」が世界共通の基準となりつつある。
配信プラットフォームの「開示義務」化と分断
配信の現場でも、透明性が最優先事項となっている。
* Spotify:2025年9月のスパム対策強化以降、実在アーティストのなりすまし禁止とAIクレジット表示を義務化。AI利用の開示がない場合、アカウント制裁の対象となる。 * DistroKid:完全AI生成曲の配信を許可しているが、アップロード時のAI利用開示が必須。無開示でAIと検知されると削除・制裁となる。 * TuneCore:2025年7月以降、100% AI生成曲の配信を拒否。人間の編集・創作証明を求めている。
また、フランスのDeezerは完全AI生成曲を推薦アルゴリズムから除外し、明確なタグ付けを行うなど、プラットフォーム間の対応差が顕在化している。
今後のトレンド:ボイスクローンの正規化と「人間らしさ」の価値
今後は、アーティスト本人の同意(オプトイン)を得たボイスクローンや、ライセンスされた音源を用いたAI生成が主流となる。Sunoは2.45億ドルの資金調達で評価を高め、Udioはライセンス済みのリミックスプラットフォームへ転換した。
AIが音楽制作の「共同制作者」として定着する中で、重要なのは「誰が、どんな想いで作ったか」という人間性の価値である。量産されたAI曲が溢れる市場において、透明性を持ち、人間の創意工夫を示すことが、クリエイターが生き残るための新たな常識となっている。
AISA Radio ALPSでは、こうした変化の速いAI音楽の動向を常に追跡し、リスナーのみなさまに最適な情報を提供し続けます。AIと人間の共創、これからも楽しみにしていてください。
