米国:音楽業界のAI著作権戦争、三極化
2026年4月現在、音楽業界とAI企業の著作権をめぐる法廷闘争は明確に三つの流れに分かれている。
1. 和解とライセンスモデルの確立 ワーナー・ミュージックは2025年11月にSunoと和解し、ライセンス契約を締結。ユニバーサル・ミュージックも2025年10月にUdioと和解し、2026年中に共同でライセンス制の「壁に囲まれた庭(ウォールドガーデン)」型AI音楽プラットフォームを立ち上げることを発表した。これらのプラットフォームでは、AI生成楽曲のダウンロードや外部投稿が制限され、アーティストはトレーニングと出力に対する補償を受けながらオプトインできる仕組みとなる。
2. 司法判断への賭け ソニー・ミュージックは唯一、SunoとUdioの両方に対して訴訟を継続している。マサチューセッツ州連邦地方裁判所とニューヨーク南部地区連邦地方裁判所で審理が進む「フェアユース」訴訟は、2026年夏に画期的な判決が下される見込みだ。この判決は「AIモデルのトレーニングが著作権のある録音物を使用することは、変換的なフェアユース(公正使用)に該当するか」という核心的な法的問いに答え、業界全体の法的プレッジャーを一夜でリセットする可能性がある。
3. 30億ドルの出版訴訟 ユニバーサル、コンコード、ABKCOの音楽出版社が2026年1月にAnthropic(Claudeの開発元)に対して提起した訴訟は、2万曲以上の楽曲の著作権侵害を主張し、潜在的な損害賠償額は30億ドル以上に上る。これは米国史上最大の非集団訴訟著作権事件となっている。争点は、トレーニングデータが海賊版サイトから取得された場合、たとえトレーニング行為自体がフェアユースであっても侵害となるかどうかだ。
日本:法務省が「声の権利」保護へガイドライン策定
国内では、法務省が2026年4月、「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」を設置し、AIによる声や肖像の無断利用に関する法的整理に乗り出した。平口洋法相は「生成AIの普及により、肖像や声の無断利用が深刻な問題となっている」と指摘。特に声優や歌手の「声の権利」については判例がなく、保護範囲が不明確だった。
検討会では、俳優の画像から動画を生成したり、歌手の音声データから楽曲を生成したりする行為が、パブリシティ権侵害や不法行為に当たる場合の範囲を整理。2026年夏をめどに実務ガイドラインをまとめ、公表する予定となっている。これにより、AIカバー動画やディープフェイク音声の作成が民事責任を問われる可能性が明確化される見込みだ。
クリエイターへの影響と今後
これらの動きは、AI音楽の「無法地帯」時代の終焉を告げるものだ。大手レーベルは訴訟からライセンスビジネスへと舵を切りつつあるが、独立系アーティストの権利保護は依然として課題として残る。現在の集団訴訟構造では、トレーニングデータに使用された可能性のある独立系アーティストのうち、実質的な回収経路があるのは4%未満と推定されている。
AI音楽の法的環境は、2026年夏の米国判決と日本のガイドライン策定によって、新たな段階に入ろうとしている。クリエイターは、単にツールを使うだけでなく、これらの法的枠組みを理解することがこれまで以上に重要になる。
--- AISA Radio ALPSでは、AI音楽の技術的進化だけでなく、こうした法律やビジネスの動向にも注目し、クリエイターの皆さんに役立つ情報をお届けしています。次回の放送もお楽しみに!
