AI音声合成大手のElevenLabsは、2026年4月29日にAI音楽プラットフォーム「ElevenMusic」を正式公開した。同社は以前より音声合成技術で知られていたが、2025年8月に公開した音楽生成モデル「Eleven Music」を基盤とし、消費者向けプラットフォームへと進化させた。
最大の特徴は、競合他社が抱える著作権訴訟リスクを回避した「ライセンスファースト」の設計だ。SunoやUdioが主要レコード会社から著作権侵害で提訴されている中、ElevenLabsは独立系レーベル連合「Merlin(マーリン・ネットワーク)」や音楽出版会社「Kobalt(コバルト・ミュージック)」と先行してライセンス契約を締結。参加アーティストのオプトイン(任意参加)制を採用し、権利処理済みのデータでモデルを学習させている。これにより、企業ユーザーや広告・映像業界での商用利用における法的リスクを大幅に低減している。
機能とビジネスモデル:リスナーからクリエイターへ
ElevenMusicは、テキストプロンプトからの楽曲生成に加え、既存の楽曲をジャンルやテンポでリミックスする機能、そして stems(ボーカル、ドラム、ベースなどの個別パート)への分離技術を提供する。生成された楽曲はプラットフォーム上で公開・発見可能であり、アーティストはユーザーのエンゲージメントに応じてロイヤリティを受け取れる仕組みだ。
プランは無料(1日5曲生成、非商用)から始まり、有料プランでは月最大400曲の生成や44.1kHzのスタジオ品質出力、TV・ラジオなどの大規模配信権が利用可能になる。日本語を含む複数言語のボーカル生成にも対応しており、日本市場におけるBGM制作需要にも適合すると見られる。
業界への影響と今後の展望
Billboardが選ぶ2026年のAI音楽企業リストでも、ElevenLabsはSunoやUdioと並ぶ主要プレイヤーとして挙げられている。同社の戦略は、単なる生成ツールの提供にとどまらず、既存の音楽エコシステムと共存・共栄するモデルを提示している。
今後は、MerlinやKobalt所属のアーティストが参加する上位モデル「Eleven Music Pro」の開発が進む予定だ。AI音楽が「グレーゾーン」から「正規インフラ」へ移行する2026年において、ElevenMusicの動向は業界標準の形成に大きな影響を与えることだろう。
AISA Radio ALPSでは、AI音楽の最新動向を常に追っています。リスナーのみなさんも、ElevenMusicの活用で新しい音楽体験をぜひ試してみてください。
