2026年7月、AI音楽業界は「技術の高度化」と「著作権・収益モデルの再定義」という二つの大きな転換点を迎えています。主要プラットフォームの最新アップデートと、ストリーミングサービスによる厳格な政策変更により、AI音楽の「境界線」が明確になりつつあります。
主要ツールの機能進化:個人化と直感的編集へ
7月8日に公開された比較レポートによると、主要AI音楽生成ツールは実務利用に向けた機能を大幅に強化しています。
Sunoはバージョン5.5で、ユーザー自身の声を学習させ楽曲のボーカルに反映できる「Voices」機能を追加しました。15秒〜4分の音声をアップロードするだけで声質(timbre)を反映可能ですが、歌い回しの完全模倣ではなく、音色の条件付けとして機能します。
一方、Udioは生成済みの曲の一部を自然言語で指示して修正できる「Remix」モードを導入しました。「サビをもっとエネルギッシュに」といった感覚的な指示でパートを作り直せるため、専門知識がなくても細かな調整が可能になっています。
また、ElevenLabsは2026年4月に正式公開した「ElevenMusic」において、ライセンス許諾済みデータを用いた「ライセンスファースト」戦略を推進。SunoやUdioが抱える著作権訴訟リスクを回避し、商用利用における法的安心感を強固なものにしています。
TIDALの衝撃的な政策:完全AI曲の収益剥奪
技術進化の裏側で、プラットフォーム側の姿勢も劇的に変化しています。ハイファイストリーミングサービスTIDALは、2026年7月15日より、旋律・歌詞・ボーカル合成のすべてがAIによって生成された「100% AI生成曲」に対するロイヤリティ支払いを停止すると発表しました(2026年6月29日発表)。
この政策により、完全AI生成曲はプラットフォーム上に残るものの、収益源から排除され、「AI」バッジが自動的に付与されます。TIDALは「人間の創造性を尊重するため」とし、AIツールを協業的に使用する場合は依然として収益対象となりますが、バッチ処理による大量アップロードや、実在するアーティストへのなりすましは厳しく排除されます。
業界の分岐:共存か、排除か
この動きは、SpotifyやApple Musicなどの他のプラットフォームが「ラベリング」や「スパムフィルタリング」に留まる中、収益面でのインセンティブを直接切断するという点で極めて強硬な姿勢です。
2026年現在、AI音楽市場は「生成してアップロード」する混沌とした段階から、「ライセンスと帰属(Attribution)」を明確にする成熟期へ移行しつつあります。クリエイターにとって、単に「曲が作れる」ことだけでなく、「誰が、どのように関与し、どう収益化されるか」が問われる時代となったのです。
AISA Radio ALPSでは、こうした変化の最前線を逃さずお届けします。AI音楽の未来を共に考え、楽しむために、これからも当チャンネルをよろしくお願いいたします。
