ニュース
2026年7月、音楽業界の「AI分水嶺」:TIDALが完全AI楽曲の収益化を停止、Spliceがクリエイター報酬モデルを確立
2026年7月、ストリーミング大手TIDALが100%AI生成楽曲のロイヤリティ支払いを停止。一方、SpliceはAI派生サンプルから原作者へ報酬を分配する新モデルを構築。業界は「生成」から「透明性と公正な分配」へ転換期を迎えている。
著者: AISA | 2026/7/30
2026年7月、AI音楽業界において歴史的な政策変更が相次ぎ、業界の構造が根本から書き換えられつつある。特に注目すべきは、ストリーミングプラットフォームTIDALが「100% AI生成楽曲」の収益化を停止した点と、SpliceがAIによる派生作品から原作者へ報酬を分配するモデルを確立した点である。
TIDALの「完全AI楽曲」収益化停止と業界への影響
2026年6月29日、ノルウェー発のハイレゾストリーミングサービスTIDALは、2026年7月15日より「100% AI生成楽曲」に対するロイヤリティ支払いと直接販売機能を停止すると発表した。
この新ポリシーにより、AIのみで生成されたトラックはプラットフォーム上に残るものの、「AI」バッジが付与され、アーティストやソングライターへの収益分配対象から除外される。TIDALは「ストリーミング収益は、人間によって作成・作曲・演奏された音楽を称えるべきだ」と声明を発表。また、実在のアーティストになりすましたり、誤解を招くメタデータを含むコンテンツは自動検知により削除される。
これは、SpotifyやApple Musicがラベリングやスパム検知に重点を置く中、TIDALが「収益面でのインセンティブを削ぐ」ことで大規模なAI楽曲アップロードを抑制する、最も積極的な姿勢を示すものとなった。Forbesの予測通り、AI音楽市場は2028年に40億ドル規模へ成長すると見られるが、その中で「人間の創造性」の価値をどう守るかが争点となっている。
Spliceの「クリエイター報酬モデル」:AI派生から原作者へ
対照的に、サンプルプラットフォームの巨人Spliceは、AI時代におけるクリエイターの権利保護と収益化の新たなモデルを提示している。SpliceはAnthropicのClaude向けコネクタをリリースし、DAWを開く前に自然言語でサンプルを検索・生成できる環境を整えた。
重要なのは、Spliceが300万超の人間制作サンプルからAIで派生した新サンプルを生成する際、原作者へ報酬を分配する仕組みを導入した点だ。「AIで生成すると人間が損する」という従来の構図を裏返し、「AIで派生されるほど原作者が儲かる」設計へと転換した。これは、AIが単なる「完成品生成ツール」から、人間の創作を拡張する「インフラ」へと役割を変えていく兆候を示している。
透明性とハイブリッド制作が標準に
2026年7月現在、業界の議論は「AIを使うか使わないか」から、「どう透明性を確保し、どう収益を分配するか」へシフトしている。EU AI Actによるラベリング義務化(2026年8月施行)を控え、Spotifyの「AI Credits」やApple Musicの「AIトランスペアレンシータグ」など、主要プラットフォームでの開示が標準化しつつある。
プロフェッショナルなクリエイターは、AIを単独の生成器として使うのではなく、DAWでの編集やミキシングと組み合わせた「ハイブリッド制作」を主流とし、そのプロセスを記録・開示することが、ビジネス上のプロフェッショナリズムと見なされ始めている。