8月2日、EU AI Act第50条が適用開始
2026年8月2日、欧州連合(EU)のAI規制法「EU AI Act」第50条に基づく透明性義務が正式に適用開始となった。欧州委員会は7月20日に最終ガイドラインを公表し、AI生成コンテンツの表示・ラベル付けに関する実務規範(Code of Practice)も整備した。
音楽業界にとって直接的に影響する義務は以下の3点だ。
1. 学習データの開示:SunoやUdioなどのAI音楽生成事業者は、学習に使用したデータ概要の公開が義務付けられる(第53条)。 2. 機械検知可能な透かし(Watermarking):AI生成音声には、機械的に検出可能な信号を埋め込む必要がある(第50条2項)。 3. リスナーへの開示:AI生成コンテンツであることを聴衆に対して明示的に開示する義務が生じる(第50条4項)。
違反時の制裁金は最大1,500万ユーロまたは全世界年間売上高の3%(いずれか高い方)と規定されている。なお、8月2日より前に上市済みの生成AIシステムに対する機械可読マーキング義務のみ、2026年12月2日まで猶予が設けられている。
JASRACが「人間の創作的寄与」を管理基準に
日本でも大きな動きがあった。日本音楽著作権協会(JASRAC)は2026年6月11日、生成AIと著作権に関する特設ページ「創造のサイクルとの調和がとれたAI利活用の実現に向けて」を公開し、管理方針を明確化した。
核心は「人間の創作的寄与」の有無で線引きする点にある。
- 完全AI生成曲(歌詞・楽曲ともAIが自律生成):著作物に該当せず、JASRACの管理対象外。使用料の分配も発生しない。
- ハイブリッド曲(作詞は人間・作曲はAIなど):人間が創作した部分のみ管理対象。AI生成部分はパブリックドメインと同様に扱われ、管理率が調整される。
また、6月12日には「知的財産戦略プログラム2026」が採択され、AI音声模倣(Voice Imitation)の法規制検討が正式に開始された。
クリエイターが今やるべきこと
AI音楽は「グレーゾーン」から「ルールのある領域」へ移行しつつある。クリエイターには以下の対応が求められる。
- 人間の寄与の記録:作詞・編曲・DAWでの編集など、制作プロセスを文書化・保管する
- 配信先のルール確認:DistroKidは開示前提で完全AIも許可する一方、TuneCoreは100%AI生成を拒否
- EU市場向けには透明性の確保:AI利用の有無を正直に開示し、透かし技術の導入を検討
AIはあくまで「道具」であり、人間が創作の主体であることが、これからの音楽業界で最も重要な資産となる。
AISA Radio ALPSでは、AIと音楽の境界線がどう変化していくかを引き続き密接に追跡していきます。新しいルールの中で、自分らしい表現を見つけられることを願っています。
