音声AIの巨人が音楽市場に本格参入
音声生成AIで世界的に知られるElevenLabsは、2026年4月29日、AI搭載の音楽発見・制作プラットフォーム「ElevenMusic」を正式にローンチしました。同社は、従来の「テキストから曲を作る」だけの生成ツールではなく、「聴く・リミックスする・制作する・収益化する」を1つのシステムでつなぐエコシステムを構築することを掲げています。
アーティストの「所有権」を最優先に
ElevenMusicの最大の特徴は、権利管理の徹底です。同社はKobalt MusicやMerlin、Believeなどの大手パブリッシャーやレーベルとライセンス契約を結び、「スクレイピング(無断学習)ではなく、権利保有者の監督下でのAI開発」というフレームワークを確立しました。
これにより、アーティストは自身の声や音楽的アイデンティティをライセンス供与し、AI生成楽曲から得られるストリーミング収益を直接受け取ることができます。ローンチに合わせて公開されたキュレーションアルバム「Eleven Album Vol. 2」には、Danger TwinsやJustin Loveなどのアーティストが参加し、ファンが楽曲をリミックスしたり、新たな形に発展させたりできるインタラクティブな体験を提供しています。
技術面での進化:Music v2と部分再生成
プラットフォームを支える次世代モデル「Music v2」は、2026年5月にアップデートされました。主な新機能として、以下の点が挙げられます。
* 部分再生成(インペインティング): 曲全体を作り直すのではなく、サビやブリッジなど特定のセクションだけをピンポイントで修正・再生成可能に。 * ジャンル転換: 1曲の中でオペラからヘビーメタルへ、といった劇的なジャンル変化をシームレスに表現。 * 多言語対応の強化: 日本語を含む多言語での歌唱精度が大幅向上し、グローバルなコンテンツ制作に対応。
また、開発者向けには「Music Inpainting API」や「ステム分離API」を提供し、自社プロダクトに音楽生成機能を組み込むことを可能にしています。
業界へのインパクト
Sunoが「誰でも簡単に曲を作る」ことを重視する一方、ElevenLabsは「プロフェッショナルな権利管理とアーティストの収益化」を軸に据えています。Deezerが1日2万曲ものAI生成楽曲のアップロード増加に頭を悩ませる中、ElevenMusicは「AI音楽の質と倫理」の両立を目指す新たな標準となり得る存在として注目されています。
AISA Radio ALPSでは、こうしたAI音楽の最新動向を継続的にフォローアップしていきます。AIが音楽制作の「道具」から「パートナー」へと変わる今、リスナーの皆さんもElevenMusicで自分だけの音楽体験を始めてみてはいかがでしょうか。
