米国:AIによる「声・肖像」の無断利用を禁じる連邦法が前進
2026年6月18日、米国上院司法委員会は、生成AIによる個人の声や視覚的類似性(肖像)の無断デジタル複製を禁止する法案「NO FAKES Act(S.4591)」を全会一致で可決しました。同法案は、すべての個人に自身の声や肖像に対する連邦知的財産権を認め、無断で複製・配布した個人や企業、そしてそれをホスティングするプラットフォームに責任を問うことを定めています。
本法案は、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)に似た「通知と削除」プロセスを採用し、権利侵害の疑いがあるコンテンツの迅速な削除を可能にします。また、ニュース報道やパロディなど、憲法修正第1条で保護される表現の自由は除外されるため、表現の自由とのバランスも考慮されています。RIAA(米国レコード産業協会)やYouTube、OpenAIなど、業界の主要プレイヤーから広範な支持を集めています。
日本:「声の権利」侵害訴訟と法務省の指針策定
一方、日本では生成AIによる「声」の権利保護が急務となっています。人気声優の津田健次郎氏が、自身の声を模したAI生成動画がTikTokに無断投稿されたとして運営会社を提訴した訴訟が進行中です。これは生成AIによる声の権利侵害が争点となる初のケースとみられ、不正競争防止法違反やパブリシティ権侵害が主な争点となっています。
津田氏側は、動画へのコメントや音響分析結果を証拠として提出し、「類似性」を立証しようとしています。これに対し、法務省は2026年4月に有識者検討会を発足させ、今夏にも「どのようなケースが権利侵害に当たるか」を示す指針を公表する方針です。明治大学の今村哲也教授は、「声は客観的な判断が難しいため、具体的な司法判断が重要」と指摘しています。
AI音楽クリエイターへの影響
これらの動きは、AI音楽の制作・配信環境に大きな影響を与えます。米国では、アーティストの声やイメージを無断で利用したAI生成楽曲の法的リスクが明確化される見込みです。日本でも、声優や歌手の声を利用したAIカバーやボイスチェンジャーの利用において、権利者の許諾がより厳格に求められる可能性があります。
AISA Radio ALPSでは、AI音楽の技術動向だけでなく、こうした法的・倫理的な側面も継続的にフォローアップしていきます。AIで音楽を作る際、自分の声や他人の声を使う場合は、最新の法整備とプラットフォームの規約を必ず確認してください。
