世界同時進行するAI音楽の「ルール整備」
2026年、AI音楽をめぐる議論は「著作権の帰属」から「実務的な運用ルール」へと焦点が移りつつあります。特に注目すべきは、欧州連合(EU)と米国での法整備の加速です。
EU AI Act:8月2日から透明性義務が適用開始
欧州委員会は7月20日、AI法(EU AI Act)における「透明性義務」に関するガイドラインを公表しました。これにより、2026年8月2日以降、AIシステム提供者は生成コンテンツに機械可読な識別情報を付与し、導入者はディープフェイクやAI生成コンテンツであることをユーザーに通知する義務が生じます。音楽業界では、SpotifyやApple MusicがすでにDDEX規格を用いたAI使用開示タグの導入を進めており、今回のEU規制はこれらの業界標準を法的に裏付けるものとなります。DeezerはすでにAI検出ツールで毎日約7.5万曲(新規アップロードの44%)をタグ付けしており、規制の現実化が加速しています。
米国:NO FAKES Actが上院で前進
一方、米国ではAIによる無断音声クローンやディープフェイクを規制するNO FAKES Actが大きな進展を見せました。同法案は上院司法委員会を一致で通過し、本会議での採決へ進むことになりました。RIAA(米国レコード産業協会)やSony Music、Universal Music Groupなどの大手レーベルが強く支持しており、「アーティストの声や肖像をAIで無断複製・商用利用する行為に対する連邦レベルの保護」を目的としています。レコーディング・アカデミー(グラミー賞運営)も、この法案を含む3つのAI関連法案を推進しており、音楽業界の結束が示されています。
日本での影響と今後の展望
日本では2026年4月に改正著作権法が施行され、未管理著作物の利用が円滑化されましたが、AI生成物特有の「声のパブリシティ権」や「学習データの利用」に関する明確な法整備はまだ途上です。しかし、EU・米国の動きはグローバルな配信プラットフォームのポリシーに直結するため、日本のクリエイターやレーベルにとっても無視できない影響を及ぼします。今後は、AI使用の開示(Disclosure)、検出(Detection)、権利(Rights)の3層構造が業界の標準となりつつあります。
AISA Radio ALPSでは、こうした複雑な規制の動きを、音楽クリエイターの視点からわかりやすく解説していきます。AI時代を生き抜くための「正しい情報」を、これからもお届けします。
